
小学校を分校するほど子どもの多い住宅街

今回はいつもの駄菓子屋探訪とはちょっと趣向を変え、息子が(もちろん自分もですが笑)日ごろお世話になっているお店でお話を伺いました。周辺は広大な住宅街で、現在も農地を宅地に転用したり、区画整理・再開発が随時進行中。小学校も児童が1200人以上いて、近く分校する予定なんだとか。「新井屋」はそんな少子化の時代にあっても、子どもが増え続けている地域にある駄菓子屋です。

店前はいつも自転車売場のような状態なので、その間を通って中に入ります。店内は左側がレジカウンター、右側が駄菓子売り場になっていて、陳列棚が多いので品ぞろえがかなり豊富。特徴的なのは壁側の棚の手前に置かれたベンチで、子どもたちはここに腰掛け、気ままに過ごしています。この配置、普通に考えると座っている人が邪魔になって品物が取りづらくなってしまうのですが、買い物をする人が来るとみんな空気を読み、適当にどいてくれるのもまた特徴。独自に発展したルールや文化が垣間見られるのも、駄菓子屋の持つ面白さのひとつです。

南向きに建っているので、食べ物を扱うお店としては日当たりが良すぎるのが悩みとのこと。アイスのケースは以前は外に置いてあり、真夏に日に当たりすぎて機械が壊れ、中身が全滅したなんてこともあったそうです。

絶妙な距離感で見守ってくれる居心地の良さ

新井屋は昭和41年(1966年)、日用雑貨やタバコ、食品を置く商店として店主が創業。当時の周辺は畑ばかりで店らしい店がなく、農家の方々に重宝されたそうです。住宅が増え始め、スーパーマーケットやコンビニができた昭和の終わりに専業の駄菓子屋となり、子どもたちが集うお店になったとのこと。

「目の前の道路は昔は砂利道で、牛に荷車を引かせてる人たちも普通に通ってたんですよ。うちの祖母が明治の頃にこの場所で一杯飲み屋みたいなことをやってて、その時から『この場所は商売に向いている』と思ってたみたいなんです。それで、専業主婦で子育てをしてた私に『家にいるなら、ここで商店をやれ』と。そんなに言うならやってみようかと思って始めたんですけど、あっという間に50年以上たっちゃいました(笑)。もう80歳だし、跡を継ぐ人もいないから、あと何年もできないと思うんだけど、うちの店がなくなっても、きっと誰かがこの学区で駄菓子屋を始めてくれるんじゃないかと思ってます。この辺りは本当にずっと子どもが多いから、若い人でも上手にやれば生活もなんとかなりますよ」

小学生だけでなく中高生や家族連れも絶え間なく来店し、いつも外が暗くなるまで混雑している新井屋。閉店間際に訪ねると、店主がかなり疲弊していて心配になることもあります(笑)。混むのは単に人口の多い地域だからというだけでなく、「新井屋のおばちゃん」が特別に優しい人で、みんなが来たくなる場所だから。付かず離れず、絶妙な距離感で見守ってくれるその雰囲気が、居心地の良さを生んでいるのは間違いありません。この地域に住む者、そして同業の後輩として、今後も長くお店が続いていくことを願っています。

新井屋
住所:埼玉県さいたま市見沼区蓮沼1499
営業時間:10:00~18:00
定休日:不定休
[All photos by Atsushi Miyanaga]

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Atsushi Miyanaga
駄菓子屋いながき店主。1979年生まれ。経営していた学童保育を事業譲渡し、その後、息子と二人で日本一周駄菓子屋巡りの旅へ。超高齢化や後継者不足、利益率の低さなど、店主から語られる昔ながらの駄菓子屋の窮状を知り、なんとかこの文化を未来に繋げられないかと埼玉県加須市に駄菓子屋を開業。発達障害のシングルファザーですが、周囲の助けもありなんとか楽しく生活しています。
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