看板はないけれど店先の二宮金次郎像が目印
美濃焼の産地として知られ、近年は「夏に高温になる町」として名前を聞くことも多い、岐阜県多治見市。複数の昔ながらの駄菓子屋を訪ねることができ、駄菓子屋探訪的にも充実していた地域でした。その中から、駄菓子屋で食べられる鉄板焼の定番「たません」を、88歳の店主が作ってくれるお店を紹介したいと思います。
JR多治見駅の南口から、県道を一直線に南東方向へ3kmほど。笠原川にかかる橋を渡った先に「中嶋菓子店」のある住宅街があります。看板はありませんが、赤と青のオーニング(日よけ)が華やかな印象の外観。店先には最近あまり見かけなくなった二宮金次郎像が置かれていて、とてもインパクトがあります。
店内は奥行きがあって広く、懐かしい感じのする什器も相まって昔ながらの食料品店のよう。駄菓子が種類豊富にあり、瓶のジュースやアイスも並んでいます。奥にはキッチンがあり、店側を向いて調理ができる位置に鉄板が。メニューはたませんとお好み焼きの2種類があり、注文するとその都度焼いて、できたてを提供してくれます。塩コショウがきいたたませんは、おなかいっぱいになるまで食べたくなる、あとを引く味でした!
カラオケをするための部屋を作っている途中
中嶋菓子店は、昭和40年(1965年)に店主が創業。実家から土地と建物を譲り受けた店主が、少ない資本で始められる商売はないかと考え、菓子類や飲料を販売する食料品店として始めたそうです。当時は周辺に美濃焼の工房が多く、たませんやお好み焼きは職人さんたちにとてもよく売れたとのこと。その後は住宅が増えて子どもが多くなるなど客層も変わり、おもちゃやプラモデルの販売をしていたこともあったそうです。
「このあたりは、昔は50軒以上の窯元があって、窯焼きさん(焼き物の仕事に従事する人)がたくさんいたんですよ。今はもう10軒もないんじゃないかな。子どもたちも昔よりは少なくなってしまって、要するに人が減ってる地域だということ。まあ田舎だし、仕方がないのかな。人が少なくなってしまうのは寂しいけど、私はこの商売が好きだし、元気な限り続けていきますよ。うちは親も兄弟も長生きな家系だから、私もきっとまだまだ長生きすると思うんだ(笑)」
お店に入ってすぐ右側、調理場の隣にあたる場所にもうひとつ部屋があり、そこは駄菓子屋とはちょっと雰囲気の違うつくり。聞けば、カラオケをするための部屋を作っている途中なんだとか。かなり訛りの強い話し言葉なので、集中していないと聞き逃してしまいそうでしたが、多趣味で、こだわりがあって、陽気でバイタリティのある店主が営む駄菓子屋でした。
住所:岐阜県多治見市滝呂町7-100
営業時間:7:30~19:00
定休日:不定休
[All photos by Atsushi Miyanaga]