いながきの駄菓子屋探訪44静岡県三島市「サイトウ文具店」QRコード決済にも対応!半世紀の歴史を持つ団地コミュニティの中心

Posted by: 駄菓子屋いながき 宮永篤史

掲載日: May 8th, 2021

全国約400軒の駄菓子屋を旅した「駄菓子屋いながき」店主・宮永篤史が、「昔ながらの駄菓子屋を未来に残したい」という思いで、これまで息子とともに訪れた駄菓子屋を紹介します。今回は静岡県三島市の「サイトウ文具店」です。

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団地の中の商店街にある年季の入った駄菓子屋

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静岡県東部を中心に菓子卸業を展開する「みぞた商店」さん。以前も三島市にある「石川商店」を紹介していただきましたが、新たに文房具店と兼業の駄菓子屋を教えてくださったので、訪ねてみることにしました。
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JR三島駅から北東に2kmほど。市営と県営の集合住宅が建ち並ぶ高台に商店街があり、その中に目的地の「サイトウ文具店」がありました。団地の中にある長屋タイプの商店街。子どものころに通っていた駄菓子屋があった場所に良く似ていて、「ああ、おじいちゃんに連れて行ってもらってたな、なんでも買ってくれたな・・・」など、さまざまな記憶が思い出とともに呼び起こされます。
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店内は入って左側が文房具、右側が漫画や雑誌、右の奥が駄菓子売り場という構成で、回の字型になっていて一周できる造り。中央の陳列棚の内側から、店主がにこやかに迎えてくれました。床についた模様状の傷が面白く、駄菓子売り場の部分だけがかなり削れています。いかにここを行き来した人が多いかという、お店の歴史の象徴に見えたので撮影させていただきましたが、「恥ずかしいからやめてくれ」とやや嫌がられました(笑)。
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「続けていたら、いつの間にか高齢者に」

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サイトウ文具店は元々、店主の母親が熱海市で同じ業態のお店を営んでおり、昭和48年(1973年)にこの場所に移ってきたそうです。自治体が市営住宅・県営住宅を建てる際に「商店街も作りましょう」となり、地元の商工会が主体となって商店を誘致。1業種1店舗に限っての募集だったので、売り物が重なることもなく、順調に営業を続けてきたとのこと。
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「母が引退してからは、いわゆるワンオペで営業していますが、私は学校を出た時からずっと母と2人でこの商売をやってきたので、この世界、この景色しか知らないんですよ。変わらず続けていたら、いつの間にか高齢者になってしまいました(笑)。でも、家業ってそういうものじゃないですかね」
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「駄菓子は売るものがずいぶん変わったなと思います。昔からみんなクジ引きが大好きだけど、ずいぶん減ってしまったなと。でもそういえば、QRコード決済をできるようにしたんですけど、それで払うとお客さんのほうにはキャッシュバックや抽選があるんですよ。『おばちゃん、50円当たったよ!』とか言って。これって、もしかして新しい時代のクジ引きってことなのかもしれませんね(笑)」
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お話を伺っている間も、保育園児や先代のころから通っているという常連さんまで、幅広い層のお客さんがひっきりなしに来店し、明るくユーモアのある店主との会話を楽しみながら買い物をしていました。商店街は高齢を理由に廃業してしまったところが多いそうで、確かに少し寂しい雰囲気ではあります。それでも、サイトウ文具店の前は常ににぎやか。ちょっと不思議な光景です。駄菓子屋はただの小売店ではなく、コミュニティの中心なんだなとあらためて感じさせてくれたお店でした。
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サイトウ文具店
住所:静岡県三島市光ケ丘2-19-19
営業時間:月~金15:00~18:00、土10:00~13:00、15:00~18:00
定休日:日曜

[All photos by Atsushi Miyanaga]

PROFILE

駄菓子屋いながき 宮永篤史

Atsushi Miyanaga

駄菓子屋いながき店主。1979年生まれ。経営していた学童保育を事業譲渡し、その後、息子と二人で日本一周駄菓子屋巡りの旅へ。超高齢化や後継者不足、利益率の低さなど、店主から語られる昔ながらの駄菓子屋の窮状を知り、なんとかこの文化を未来に繋げられないかと埼玉県加須市に駄菓子屋を開業。発達障害のシングルファザーですが、周囲の助けもありなんとか楽しく生活しています。

駄菓子屋いながき店主。1979年生まれ。経営していた学童保育を事業譲渡し、その後、息子と二人で日本一周駄菓子屋巡りの旅へ。超高齢化や後継者不足、利益率の低さなど、店主から語られる昔ながらの駄菓子屋の窮状を知り、なんとかこの文化を未来に繋げられないかと埼玉県加須市に駄菓子屋を開業。発達障害のシングルファザーですが、周囲の助けもありなんとか楽しく生活しています。

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