昭和の香りが漂う昔ながらの駄菓子屋
福井駅周辺は行政庁舎やオフィスビル、商業ビルが立ち並ぶ場所ですが、足羽川を渡ると急に戸建住宅が広がる景色に一変します。そんな特徴のある街並みの中で、昔ながらの駄菓子屋を見つけたので訪ねてみました。
福井城があった石垣の上に建つ福井県庁から、南西へ2.5kmほど。静かな住宅街の角地に、「高田たばこ店」がありました。緑と白のテントに赤いポスト、年季の入ったガラス戸、そして自動販売機。昭和の香りが漂う、素晴らしい佇まいです。
夏は朝5時前から営業
店内は10畳ほどの広さ。駄菓子は入って左側の棚に並び、和菓子や袋菓子も置いてありました。外観の印象よりも新しめな床や天井。手直ししながら大切に守られてきたことがうかがえます。店主はちょうど接客中で、話し言葉は北陸と関西の方言が混ざったような独特の響き。気になって尋ねると、「そのまんま、福井弁よ(笑)」とのことでした。
入口付近には、仏花と線香も置かれています。これについても尋ねると、ここは市営墓地のそばにあり、お墓参りの人も立ち寄るとのこと。なので、和菓子や袋菓子はお供え物としても使うそうです。気温が上がる前に墓参を済ませる人が多い夏場は、なんと朝5時前から営業。通常でも5時半から開けているそうで、知りうる限りでは、日本一早く開店する駄菓子屋です!
たばこ屋で駄菓子屋で墓参者にも便利なお店
高田たばこ店は戦後間もないころ、店主の舅さんが創業。警察官からの転身で、当時は食料品や雑貨を扱う商店だったそうです。開店から70年以上が経過した現在は、大人にはたばこ屋、子どもには駄菓子屋、そして墓参者には便利なお店として、マイペースに営業しているとのこと。
「私の実家も商店で、ここは嫁いできてから手伝い始めて、代替わりして今に至ります。儲かるとか、特に子どもが好きとかそういうことでもないんですけど、自分にはこの仕事が向いていると思っているので続けてます。DNAなのかな(笑)」
店主お手製の手芸品も展示
「売ってる駄菓子はあんまり変わらないけど、子どもたちは変わったなと思いますよ。昔と比べると、親から離れて単独で行動する子が減ったなと。でもこれって、子どもじゃなくて、親の考え方が変わったってことかもしれませんね」
店内に展示されている洋服を含めた手芸品は、店主のお手製。営業時間が長いので、趣味を楽しみつつ店番をしているんだとか。沖縄県南城市の「もりのや」と、北海道江別市の「あ~るじゃん」に続き、またまた手芸に長けた店主に出会い、駄菓子屋探訪の面白さを感じました。近くには足羽山公園もある高田たばこ店。桜や紫陽花の名所とのことなので、そんな季節に再訪したいと思います。
住所:福井県福井市足羽5-7-22
営業時間:5:30~19:30
定休日:不定休
[All photos by Atsushi Miyanaga]