新しめの建物にある昔ながらの駄菓子屋
能登半島の付け根、石川県河北郡内灘町に駄菓子屋があるという情報を見つけたので、早速訪ねてみました。この辺りは、潟湖と砂丘という独特の地形。干拓で作られた農地を通ってお店へ向かうと、道路よりも湖面が高く見え、「海抜マイナス地帯」ならではの体験をすることができます。
砂丘の高台にそびえ立つ、金沢医科大学病院。そこから河北潟方面に降りたところにある大根布地区に、目的の「岡田商店」がありました。扉には店名があるものの、看板らしい看板はなく、遠目からはカプセルトイだけが目印。建物は新しめですが、昔ながらの駄菓子屋の雰囲気を感じます。
壁にレトログッズが飾られた店内
店内は土間状で、10畳ほどの大きさ。外観の印象と同様の、整った造りです。売り場は居室と直結しており、「こんにちはー!」と声を掛けると、店主が扉を開いて迎えてくれました。
ロの字型に棚が置かれ、金券やスーパーボールなど、くじ引き類が多い品揃え。壁側の棚には、レコードや雑誌など、レトログッズも飾られています。
会計の仕方がとても特徴的で、店主に買い物かごを渡すと、客は袋を広げて持ち、店主が計算しながら中に入れていってくれます。この共同作業がきっかけとなり、自然と会話も増えて、なんだか急に親しくなれた気がしました。
昔は「百貨店」と呼ばれていた
岡田商店は、元々は戦前からある食品と日用品のお店で、豊富な品数から「百貨店」と呼ばれ、地域の人々に利用されてきたそうです。店主は御年88歳! 昭和26年(1951年)に嫁いできて、お姑さんと一緒に切り盛りしていたとのこと。
「昔は奥の奥まで売り場で、けっこう広かったんですよ。時代が変わってコンビニやスーパーができて、だんだんと個人商店が難しくなっていきました。平成19年(2007年)に建て替えたんですが、そのときに廃業しようと思ってたんです。でも『なんにもしなかったらボケちゃうよ』ということで(笑)。儲かるはずもないんだけど、駄菓子屋をやるぶんだけ売り場を残しました」
この商売は人と話せるのが儲け
「このあたりも、子どもが減ったなと感じます。外で遊ぶ声が聞かれなくなったなと。でも店が開いてれば誰かは来る。誰も来なくても開けてますけどね(笑)。人と話すのが楽しいんですよ。この商売は、人と話せるのが儲け(利益)です」
現在は息子さんが仕入れや陳列を担当し、展示されているレトログッズも息子さんの私物なんだそうです。店主と話し込んでいると、顔を出してくださったので、売れ筋の駄菓子のことや仕入れ先のことなど、さまざまな情報交換ができました。
石川県では昔ながらの駄菓子屋をなかなか見つけられず、ようやく出会えたのがここ、岡田商店。歴史ある貴重な1店が末永く続くことを、心から願っています。
住所:石川県河北郡内灘町大根布4-171
営業時間:10:00~18:00
定休日:不定休
[All photos by Atsushi Miyanaga]