
TheyがWord of the Yearに選ばれた理由
日本でも流行語大賞や一年を表す漢字などを年末になると発表されますが、欧米でもさまざまな辞書出版社や関連団体がWord of the Year(その年の一語)を発表します。
例えば、2021年はVaccine(ワクチン)、2020年はPandemic(パンデミック)といったように、ここ2年はやはり新型コロナ関連の言葉が並んでいます。また、2015年には絵文字としてよく使われる笑いながら泣いている顔が選ばれたりもしています。

2019年にアメリカの辞書出版社メリアムウェブスターがWord of the Year、そして2010年代の10年を代表する言葉として選んだのは、なんとTheyという言葉。
ここ数年、Theyを「男性、女性という性別を特定しない単数形の代名詞」として使うことが、かなり定着してきているのが理由です。
※参照
‘They’ Is Merriam-Webster’s Word of the Year 2019 – Merriam-Webster’s
Singular ‘they’ voted word of the decade by US linguists – The Guardian
「性別を特定しないひとりの人」を表す代名詞They

日本語ではむしろ「彼、彼女」よりも「その人、あの方」のような表現を使うことが多いので、あまり不自由に感じることがありませんが、英語では以前は性別を特定せずに第三者のことを表現する自然な表現方法がありませんでした。LGBTQ+への理解が深まる中、欧米では「彼、彼女」に替わる性別を特定しない表現方法として、Theyを使うことが浸透してきています。
性別は男性と女性の二択ではない!というコンセプトのThey

Theyという言葉がここまで世界的な広がりを見せている大きな理由に、「性別は男女の二択ではない」という考え方が受け入れられつつあることがあります。以前から日常会話でもHe or She(彼または彼女)を使うことで、性別を特定しないことが可能でしたが、Theyを使うことで男性にも女性にも属さない、それ以外の性別の人の存在を表現することができるようになったのです。
あまりはっきりしないTheyに関する文法

単数のShe/Heでは動詞に三単現のsを付けますが、単数のTheyのときはどうする? など細かい文法に関しては、まだあまりしっかりしたルールが確立されていません。そのため、各々のそのときの勢いで後に続く動詞も単数系にしたり複数形のままだったりというのが実情です。
ただ、私の周りで使われている感覚では
- Theyの後はAre, wereを使う(つまり、単数形でも通常のTheyと同様)
- 動詞に関してはSheとHeと同様にsを付ける人もいる
- 以前には存在しなかったthemself (その人自身)という単数形を使う人もいる
実際に単数形のTheyを使うのはいつ?

単数形のTheyを使うには、大きく分けて2つの場面があります。
1つめは、特定の人がまだ決まっていない場合に「その人」と言いたいとき。例えば「次の総理大臣」「次の担任の先生」のように、まだ誰になるかわからないので女性か男性かが不明な場合には、Theyを使う人が増えています。
例)We need to recruit one more person in our team.
私たちのチームにもう1人採用する必要があります。
They has to be able to speak Japanese.
その人は日本語が話せなければいけません。
2つめは実際にTheyを代名詞として使ってほしいと公表している人のことを話すときです。ここ数年、イギリスでもビジネスシーンでのメールの最後に名前や肩書とともに「He/She/Theyの、どの代名詞で呼ばれたいかの意思表示をする」ことが一般的になってきています。
例)Charlotte Smith (pronounce: she/her)
Sales manager, Harrods London store
シャーロット・スミス(代名詞:彼女/彼女の)
セールスマネージャー、ハロッズロンドンストア
He/She/Theyを決めるのは本人
Heは男性にSheは女性に使い、TheyをLGBTQ+の人達に使えばいいの? と思った人もいるかもしれません。でも、これは大きな間違いです!
LGBTQ+を理解しているつもりで、ゲイの人をSheやTheyで呼ぶのは失礼にあたります。特に公の場面やビジネスシーンでは、大変な問題に発展してしまうかもしれません。
歌手の氷川きよしさんのように「男女にとらわれず自分らしくいたい」という多くの人の気持ちを汲んで新しく使われるようになったTheyですが、He/She/Theyのどれを使ってもらうかは、本人が決めること。新しいTheyの使い方を学ぶことで、新しい世界の常識にも理解が深まります。
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Ai
20代のころからイギリス在住。科学者。フットボールに夢中な男の子の母親として奮闘中。ヨーロッパ各地のマーケット(蚤の市)散策、ワイン、見晴らしのよい絶景スポット、特に海が大好き。
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