最初に行った駄菓子屋を再訪
駄菓子屋探訪を重ねると、新しいお店を見つける楽しみに、以前訪ねたお店を再訪する楽しみが加わり、とめどなく濃厚になっていきます。そこに駄菓子屋がある限り続く旅。今回は、駄菓子屋探訪で一番初めに行ったお店を久しぶりに訪ね、あらためてお店の歴史を伺ってきました。
北海道第二の都市、旭川市。街の中心部を通る幅の広い一方通行路、「3条通り」の起点部分に、酒屋と兼業の駄菓子屋「三谷商店」が以前と変わらない姿でありました。「いつ来ても同じかたち」という安心感は、昔ながらの駄菓子屋の特徴の一つでもあります。
駄菓子からカップ麺、地酒、子どもたちのアルバムまで
出入口が左右2カ所あり、店内の通路はロの字になっています。右側から入ると駄菓子売り場で、左側から入ると飲料が並ぶ冷蔵庫と日用品。奥にはたばこやお酒の売り場、そして来客用のベンチがありました。
駄菓子の棚の上には、常連さんたちの写真が名前入りで飾られています。近くに旭川商業高校と旭川東高校があり、高校生の利用が多いとのこと。ブタメンなどの駄菓子屋系ラーメンではなく、大きいサイズのものが多数用意してあるのは、そんな食べざかりの世代への配慮から。北海道のご当地インスタント食品「焼きそば弁当」や「地酒」などの、旅人的にもうれしい物が並べられています。
店内には、店主が「子どもたちの顔と名前を覚えるために始めた」というアルバムもありました。15年ほど前から続け、今やその数は200冊以上。これを見て懐かしむために来店する人も多いそうです。
子どもからのリクエストで駄菓子を置くように
三谷商店は昭和39年(1964年)、店主の義父が創業。元々は酒・たばこと日用雑貨を扱うお店で、駄菓子を置くようになったのは、代替わり後の昭和53年(1978年)ごろから。きっかけは、親の買い物に付いてきた子どもからのリクエストだったそうです。当時は中学校の1学年に10クラスもあるほど子どもが多く、その後は駄菓子目当ての小中高生の来店が急増。駄菓子屋としても定着し、現在に至るとのこと。
「私自身は駄菓子屋に通ってたわけじゃないので、初めのうちはなにもわからなかったんですよ。みんなくじ引きが好きだとか、子どもたちは名前を覚えられると喜んでくれるとか、駄菓子も意外とおいしいとか(笑)、そういうのは、やりながら学びました。今ではみんなの居場所になっているし、大人になってからも遊びに来てくれる。やってよかったなと思ってます」
もうすぐ50年
「自営業は、辞め時は自分で考えなきゃいけないんですよ。嫁いで来てから手伝い始めて、引き継いだのは昭和50年(1975年)ごろだから、もうすぐ50年になります。キリも良いし、元気なうちにそのあたりでスパっと辞めようとも思ってますけど、子どもたちも来てくれてるし、もう少し先になるかな?(笑)」
アルバムに収められている写真を見ると、その人の名前だけでなく、家族のことや進路など、さまざまな話題を覚えていた店主。年齢を問わずたくさんの人と向き合ってきた、人柄の素晴らしさの一端を見ました。いながきの駄菓子屋探訪、始まりの地、三谷商店。個人的な思い入れからも、「もう少し先まで」ではなく、いつまでも同じ姿であってほしいお店です。
住所:北海道旭川市3条通1丁目右3号
営業時間:7:00~19:00
定休日:不定休
[All photos by Atsushi Miyanaga]