
新潟との県境の街にある店

富山県全域の駄菓子屋を下支えする富山市の卸問屋、トイ・スクエア橋本。以前「でんきやSUNはまもと」を訪ねた際にお世話になりましたが、今回も取引のある駄菓子屋を教えていただくことができたので、訪ねて来ました。
富山市の中心部から、国道8号線で50kmほど東へ。新潟との県境の街、新川郡朝日町にある昔ながらの住宅街の角地に、目的の「新田駄菓子屋」がありました。お店の西側は常光寺へ向かう道で、北側は直接の接続ではないものの、延長線上に脇子八幡宮がある通り。なにやら霊験あらたかな感じのする立地です。
昔の映像を見るような独特の雰囲気

時間の経過を感じる建物の佇まい。昔の映像を見ているような、素晴らしい趣があります。隅切り部分に入口があるのも特徴的で、誘い込まれるような雰囲気。赤いのれんのかかる戸を開け、その世界に入りました。

店内は土間状で、10畳ほどの広さ。駄菓子は入ってすぐの島型の棚と、背の高い棚の2カ所に分けて置かれています。10円、20円、30円という安価な価格帯の物が多く、クジものも豊富な印象。奥の住居部分から店主ご夫妻が出てきて、買い物をする際は袋詰めを奥さん、勘定は旦那さんがそろばんで計算してくれました。
店主夫妻は結婚67年目

新田駄菓子屋は、新田訓さん・まさ子さんご夫妻のお店。今年(2022年)で92歳と87歳になるお二人は、結婚67年目だそうです! 昭和31年(1956年)ごろ、この場所へ転居するとともに、食料品と雑貨を扱う商店として創業。長らくまさ子さん1人で運営し、訓さんは定年退職後に手伝うようになったとのこと。

島型の棚は、手先の器用な訓さんによるもの。新巻鮭の入っていた木箱を再利用していて、足元の部分にその名残りがありました。現在は流木を拾ってきて、加工して楽しんでいるのだとか。見習いたいバイタリティです。

駄菓子屋は長生きの秘訣!

「駄菓子は近所の人の勧めで置くようになりました。駄菓子専業になったのは、もういつのことだったか忘れちゃいましたね(笑)。元々人と話すのが好きだったので、この仕事は向いているなと思って続けてきました。誰かが来て、誰かと話して、駄菓子の計算をする。単純ですけど、幸せな日々ですよ」(まさ子さん)
「我々くらいの年齢になったら、何もしてなかったらあっという間にボケちゃう。いろんな人が向こうから来てくれるこの商売は、老後にはちょうどいいですよ。頭や体を適度に使って、お酒は早目の時間から嗜む程度に飲んで、夫婦仲良く暮らす。これが長生きの秘訣です(笑)」(訓さん)
お話を伺っている間、お茶とお菓子を延々と振る舞い続けてくださったお二人。「お菓子を売ってるお店なのに、こんなに貰っていいんだろうか……」と、やや気が引けましたが、これがきっと、ご夫妻で作ってきたお店の空気感。遠慮なくいただき続けた結果、完全に満腹になりました(笑)。
耐えない笑顔で、駄菓子についてだけでなく、長寿時代の人生の楽しみ方を教えてくれた新田駄菓子屋。場所も、建物も、人も、すべてが特別な駄菓子屋でした。

新田駄菓子屋
住所:富山県下新川郡朝日町泊198
営業時間:7:00~17:00
定休日:不定休
[All photos by Atsushi Miyanaga]

Atsushi Miyanaga
駄菓子屋いながき店主。1979年生まれ。経営していた学童保育を事業譲渡し、その後、息子と二人で日本一周駄菓子屋巡りの旅へ。超高齢化や後継者不足、利益率の低さなど、店主から語られる昔ながらの駄菓子屋の窮状を知り、なんとかこの文化を未来に繋げられないかと埼玉県加須市に駄菓子屋を開業。発達障害のシングルファザーですが、周囲の助けもありなんとか楽しく生活しています。
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