いながきの駄菓子屋探訪83:談話の場としても愛される福井市「塚田商店」

Posted by: 駄菓子屋いながき 宮永篤史

掲載日: Mar 19th, 2022

全国約400軒の駄菓子屋を旅した「駄菓子屋いながき」店主・宮永篤史が、「昔ながらの駄菓子屋を未来に残したい」という思いで、これまで息子とともに訪れた駄菓子屋を紹介します。今回は、店主との会話を楽しめるイスが用意されている福井県福井市の「塚田商店」です。

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博物館に再現された駄菓子屋を見学

福井駅から北に3kmほどの場所にある、福井県立歴史博物館。館内では「昭和のくらし」として、昭和30年代から40年代の家屋や商店を再現したコーナーが常設展示されています。その中にある駄菓子屋は、資料になりそうなくらい細部までしっかりと作り込まれたもの。昭和レトロ好き必見のクオリティです。

そんな福井県立歴史博物館のある幾久公園のそばで、昔ながらの商店を発見。展示を見て沸き立った駄菓子の購買意欲を満たすべく、迷う余地なく訪ねてみることに。公園内の陸上グラウンドからは50mほど。用水路が流れる住宅街の通り沿いです。

小さなスーパーマーケットのような店内

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大きなオーニングテント、自動販売機にポストと、すべてが赤くて目立つ外観ですが、店名の表示はありません。引き戸を開けて入店すると、店主が常連さんと談笑中。イスが多数用意してあり、たくさんの人が出入りしている光景が浮かびます。
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店内は中央の棚の表と裏に駄菓子が置かれ、壁側の棚には調味料やインスタント食品、缶詰などが並んでいます。奥の冷蔵庫には生鮮食品もあり、小さなスーパーマーケットといった品揃え。飲み物のショーケースには、福井県でしかお目にかかれないご当地飲料「さわやか」のビンが並んでいました。
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入って右手側は、新しめの仕切り壁になっています。気になったので尋ねると、元々は間口通りの広いワンフロアで、現在より倍以上の品数を扱うお店だったそうです。年齢を重ねたことでその状態のままでは管理が難しくなり、最近になって半分に縮小したとのこと。
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近所の人が話をしに来る場所でもある店

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お店の名前は「塚田商店」で、店主の義母が昭和28年(1953年)ごろに創業。嫁いできてから手伝うようになり、代替わりを経て現在に至るそうです。手伝い始めた当初は、量り売りの菓子店だったとのこと。まさしく、博物館に展示されている駄菓子屋のような雰囲気だったのではないでしょうか。
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「もう歳も歳なので、そろそろ廃業しようかとも思っていたんですよ。スーパーもコンビニも、どこにでもある時代だし。だけど、『辞めたらボケちゃうよ』ってみんなに脅かされるんですよ(笑)。とりあえずお店っていうかたちになっていれば、近所の人もちょっと寄ったり、話をしに来たりしやすいでしょう。だから店は小さくなりましたけど、続けています。すっかり年寄りの街になっちゃったけど、相変わらず子どもたちも来ますしね」

向かいに専業の駄菓子屋があった時代も

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以前は道路を挟んだ向かいに専業の駄菓子屋があり、たくさんの子どもたちが何度も往復をして品定めし、「どっちで買うか」と悩んでいたそうです。子どもにとってはパラダイスだった反面、距離が近すぎて経営者は難しい関係だったのでは?と思いましたが、「こちらはあくまで商店、あちらは駄菓子屋だったからね」と、商売敵というわけではなかったとのこと。
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当時のその状況を楽しんでいた世代も、大人になって子どもを連れて遊びに来るという塚田商店。この日も幅広い世代が来店し、使い込まれたイスに座って、店主との会話を楽しんでいました。
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塚田商店
住所:福井県福井市文京2-19-31
営業時間:7:30~18:00
定休日:日曜日

[All photos by Atsushi Miyanaga]

PROFILE

駄菓子屋いながき 宮永篤史

Atsushi Miyanaga

駄菓子屋いながき店主。1979年生まれ。経営していた学童保育を事業譲渡し、その後、息子と二人で日本一周駄菓子屋巡りの旅へ。超高齢化や後継者不足、利益率の低さなど、店主から語られる昔ながらの駄菓子屋の窮状を知り、なんとかこの文化を未来に繋げられないかと埼玉県加須市に駄菓子屋を開業。発達障害のシングルファザーですが、周囲の助けもありなんとか楽しく生活しています。

駄菓子屋いながき店主。1979年生まれ。経営していた学童保育を事業譲渡し、その後、息子と二人で日本一周駄菓子屋巡りの旅へ。超高齢化や後継者不足、利益率の低さなど、店主から語られる昔ながらの駄菓子屋の窮状を知り、なんとかこの文化を未来に繋げられないかと埼玉県加須市に駄菓子屋を開業。発達障害のシングルファザーですが、周囲の助けもありなんとか楽しく生活しています。

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