月曜日と水曜日しか営業していない隠れ家のような店
神戸市長田区にある、昔ながらの空気を感じさせる住宅街。そんな街で、表通りからはまったく見えない路地の奥に、小さな駄菓子屋を見つけたので訪ねてみました。月曜日と水曜日しか営業しておらず、さらに、訪ねた日は長期休業から再開した初日だった様子。ご縁があったようで、旅の醍醐味を感じます。
阪神高速3号線と海に挟まれた腕塚町地区の、車の入れない細い路地。「フライドポテト」と書かれたノボリが表通りに立っていること以外は、目印らしい目印はありません。歩を進めると、赤い暖簾がかかった、隠れ家のような雰囲気のお店に着きました。「ヤンキーお断り」。パンチのある文言が入り口に貼ってあります。
100点のテストでフライドポテトが半額
店内は入って左側に調理場と店主のいるカウンター、右手前側に駄菓子が置かれ、右奥には子どもサイズの飲食テーブルがありました。長針・短針に証明写真が付いた時計や、100点のテスト、男気のあるポエムなどが貼られた壁。お店とお客さんの関わり方が垣間見える数々のアイテムからは、6畳ほどの店内が、大きなコミュニティの場になっていることを強く感じます。
50円のたこせんは、ソースで名前を書いてくれます。なんだか絆が深まるような、温もりと面白さの両方がありました。そして、100点のテストを持ってくると、フライドポテトが半額! 小テストでもOKとのことで、これをモチベーションに勉強を頑張るようになった、という保護者からの声も多いんだとか。
本業の豆腐屋のかたわら駄菓子屋を経営
お店の名前は「駄菓子屋あ」。4人の男の子を育てる店主、あっこさんの頭文字から付けたんだそうです。2010年ごろ、自分の子どもたちの遊び場にもなればと開業。転居にともなって一度閉店したのち、現在の場所に移って再び開業し、5年ほどになるとのことです。
「本業は、私の父と弟が経営している、100年以上続いてる豆腐屋です。豆腐屋は冬が繁忙期なので、そういう時期は特に、ヘロヘロになりながら駄菓子屋を開けてます(笑)。最初の店では長男と次男の友達が、今の店では三男と四男の友達がよく来てくれます。みんな、大人も子どもも関係なく私を『あっこ』と呼び捨てにして、営業日は少ないんだけどいつも来てくれる。大人になった子も顔を出してくれて、充実してて楽しいですよね、駄菓子屋経営」
駄菓子屋の原風景
「ヤンキーが溜まると面倒だからヤンキーお断りにしてるけど、ヤンキーほど『おれはヤンキーじゃない』って言ってお店に来がち(笑)」と店主。信頼が厚く、慕われる人柄は、短い滞在時間でも伝わってきます。店前は車が入ってこないので、子どもたちが路地を中庭のように使って遊んでいる駄菓子屋あ。神戸の路地裏で、駄菓子屋の原風景に出会えました。
住所:兵庫県神戸市長田区腕塚町8-5-20
営業時間:15:30~18:30(時間前に閉店する場合もあり)
定休日:火木金土日(月水のみ営業)
[All photos by Atsushi Miyanaga]