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「日本の道100選」の通りにある昔ながらの駄菓子屋
元々は独立した自治体で、現在は富山市の一部となっている八尾町。毎年9月に年中行事「おわら風の盆」が行われ、多くの観光客が集まることで有名なこの地区で、昔ながらの駄菓子屋を見つけることができたので訪ねてみました。
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富山市の中心部から、南へ17kmほど。越中八尾駅方面から野積川を渡ると、その先は古い街並みが残る高台です。擁壁が石垣状になっていて、街灯も灯籠に似せた造り。歴史ある特別な場所、という雰囲気を感じながら坂を上っていきます。
石畳の坂道に沿って町家が立ち並び、「日本の道100選」にも選ばれているという諏訪町本通り。穏やかで、気品のある美しい通りの東端に、「こどもや村井商店」がありました。曲がり角に建ち、外壁に店名もあるので、街並みに溶け込みつつも目立っています。
ご当地ものも並ぶ特徴的な陳列
店内は12畳ほどの大きさで、入って左手側と奥が駄菓子売り場、右側が飲食スペースになっていました。駄菓子の大小に関係なく、すべてが隙間なく並べられた、完璧な「A型陳列」(※)。ここまで整った駄菓子屋には、そうそう出会えません。そして、その駄菓子が並べられた奥に店主が座る、キオスク方式の陳列棚もまた特徴的です。
冷蔵庫にはご当地もの、八尾乳業協同組合製の瓶入りコーヒーも置かれ、ローカルとレトロの両方を楽しめます。くじ引き類も種類が豊富で、ここでは「つまんこ」という方言で呼ばれていました。
「おわら風の盆」の時期は深夜営業も
こどもや村井商店は、先代である店主の母親が、終戦直後の昭和20年(1945年)頃に立ち上げたお店。当初は行商のような形式で菓子類や玩具を売り、現在の店舗は昭和51年(1976年)に建てられたものとのこと。店主の旦那さんが定年退職後に手伝い始め、その後に店主も定年を迎え、合流。見事な陳列は、几帳面な性格だという旦那さんによるものだそうです。
「おわら風の盆は、23時でひと区切りしたあと、人は明け方まで動いているんですよ。なので、その時期は家族総出で、街が寝静まるまで店を開けています。ラーメンとか駄菓子とか、長丁場で小腹が空いたときに丁度いいでしょう? 2020年、21年はコロナの影響で開催されていません。だからちょっと楽をしちゃいましたね(笑)。にぎわいのある世の中に、また戻ってほしいですね」
先代の店主も見守る店
「この商売の楽しいところは、子どもたちの充実した顔を見られることですね。だいたいは小学校を卒業すると駄菓子屋も卒業していくけど、時々ふらっと寄ってくれたり、結婚や出産の報告をしに来てくれたり、そういうのもうれしい。みんな孫みたいなものです」
「子どもが集まるお店だから『こどもや』」と名付けた先代は、90代後半まで店に立ち、2017年に102歳で亡くなられたとのこと。人付き合いの上手そうな、素晴らしい笑顔の写真がお店を見守っています。「母がここを遺してくれたおかげで、いつまでも社会と関わり続けることができています」とも話してくださった店主。こどもや村井商店は、創業者が今もなお、関わる人すべてを幸せにしているお店でした。
住所:富山県富山市八尾町東町2082-4
営業時間:7:00~18:30
定休日:不定休
[All photos by Atsushi Miyanaga]